KIKORI

私達はRainbowをしっている

男友達は、魂を自由にしてくれる

イタリアでは、男女の友情は存在しない、と言われ続け、実際10年も住んでいるのに、一人もできていない。

どの国でも男友達の方が多かった私にとって、女性と友情と育むことは、正直面倒臭い事でもあったが、それでも10年やっていれば、互いに理解することができるようになり、数少なくても何でも話せる女友達というのが増えた。

私の経験からいうと、「本当のこと」を聞きたい女性は、あまりいないということ。相談のように持ちかけてきても、ただ話したいだけで、別にアドバイスを求めているわけでも、問題を解決しようとするわけでもなく、なんか話してスッキリして、嘘でも何でも「あなたは大丈夫よ。」とみんなで励まし合い、終わる。

私にとってはこれが全く理解できず、真剣に相手を想って解決法を見つけようとするから、逆に傷つけたり、余計落ち込ませたり、プレッシャーをかけたりすることが多かったのだと思う。

色々学びました。女性の長所をみつけて、それを伝えることで、元気づけてあげられるということ。共感することで、安心感を与えてあげられること。自分のつらい経験を話してあげることで、希望を与えてあげられること。

最近、ある男性に、私はしつこくアプローチしている。50代後半の独身イタリア人で、住まいは5つ星ホテル、3食の食事は全て3つ星レストラン、という、少しかわったバチェラーだ。過去に日本人の恋人がいたこともあり、パンデミック前は年の半分は東京だったから、日本の文化や習慣など、細かいところまで気づいている。

「私とあなたは友達。」これをしつこく、彼を追いかけまわし、リピートしている。「あなたはイタリア人だけど、日本で手を出さない女友達いっぱいいるでしょう。私もその一人になりたいの。」と。「でも僕は君のことが好きなんだ。」となかなかOKを出してくれなかったけど、先週やっと、「わかった、わかった!」とサレンダーしてくれた。

彼とは、新しいホテルのオープニングに行ったり、同じように毎日そのレストランでランチをする74歳の友人を紹介してもらい時間を過ごしたり、散歩につき合わせたり、としているうちに、少しずつ独身男性の秘密が見えてきた。

どこ行くのにもついて行く私にため息をつきながら、珍しいお店に入っていくな、と思ったら、宝くじ。これを毎週買っているらしい。「さぁ、もう帰って。僕は勉強しなきゃいけないから。」というから何勉強しているのか聞いたら、馬。それ、ただのギャンブルじゃん。

なぜ、ホテル住まいなのかを聞いたら「僕にとっては家は、親が住んでいた家だけだ。二人とも亡くなったから、空っぽの家に帰ると毎日寂しいから。」と。「愛は親が本当に与えてくれた。だから愛をみつけるのは難しい。比較してしまうから。」と。

なぜ、同じレストランに毎日行くのか聞いたら「ここは家のキッチンみたいなものだ。シーフードのお店なのに、僕が食べたい肉でも何でも用意してくれる。毎日親の家で食事をする感覚なんだ。」たしかに、そこのオーナーはひょいっと出てきて、「じゃ、散髪行ってくる」とまるで、お兄さんのような感じ。そこにいるカメリエーレ達は、仕事の合間にテーブルにきては、私達の会話にジョインして、「奥さん愛しているけど、何十年も同じ女性とセックスするのつまらない。」とか、男子トークをしていく。

毎日他人に囲まれて疲れないのか聞いたら、「人が日常に色をつけてくれる。同じ日ってないよ。毎日違う。ホテルのバーやロビーで誰かと出会って、充実する日もあるし、レストランでセクシーな女性と話をして楽しい日もあるし、反対に何もなくて、つまらない日だってある。”今日はどんな人と出会うのだろう”とワクワクするんだ。同じ人と会っても、機嫌だって変わる。」と。

ま、たしかにローマの5つ星ホテルにいると、ハリウッドスターや日本人だと、中田英寿とか、メッシなどのトップアスリート、世界中の大富豪達と出会う確率は高い。

なぜ日本人の彼女と別れたのかを聞いた。「彼女は、”まわりがみんな結婚して子供いるから、私も結婚して、子供ほしい。”と言ったんだ。日本人はそういうところがある。愛ではなく、まわりと同じであることにこだわる。そんな理由で生まれてくる子供は可哀そうだ。」「それに、夜寝る前最後にバーに行ってシガーを嗜む。これは僕が毎晩やっていることで、これを変えることはない。それに付き合えと言わないけど、行くな、と言われても困る。一度、彼女はバーに降りてきて、僕をみるなり思いっきり叩いてきたんだ。」と。

彼はただのワガママではない。人の痛みがよくわかる。でも男友達ってこっちが持ち出さない限り、分かっていながら、掘り下げないどころか、触れないでいてくれる。でも寄り添ってくれているのを感じる。いつ泣き出しても、表情一つ変えずにそばにいてくれる。何も隠さず、素を見せてくれる。問題を話せば、解決策を一緒に考えてくれる。何も大げさにしない。べたべた褒めたり、傷のなめ合いはしない。

「はい。もう早く帰って。これ以上一緒にいたら危険だから。」と大きな口を開いて笑って、タクシーの運転手に「頼むよ。」と少し厳しい目で見て、ホテルを追い出された。

もう何年も、一人で戦っているような感覚から、抜け出せた気がした。別に彼が一緒に戦ってくれるということではなく、F1ドライバーがピットに入る感覚だろうか。

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最近お気に入りのホテルのラウンジ